REPORTvol.1
進化系生産者の“生牡蠣” を一流バーテンダーがアレンジしたら、変な声が出るくらい美味しかった、の巻

野間研究員(身長186センチのモデル体型)が、
念願のファームスズキのフレッシュな牡蠣を口に入れた直後の表情
“最高のマリアージュ、信じられないくらい美味しいですね”(野間研究員)
広島を「世界一牡蠣がおいしく食べられる街にする」――そんな目標を実現するために足りないピース、それは「生」。つまり、広島では焼き牡蠣やカキフライなどに押され気味の「牡蠣の生食文化」を強化することであります。
実は牡蠣食う研の発足前から、広島での生食用殻付き牡蠣(※以下、本記事では“生牡蠣”と表記)を広めるチャレンジは、生産者レベルで着々と進んでおります。いくつかの生産者さんが“生牡蠣”を手がけ、ブランド化にも成功しているのです。
今回はその中でも、瀬戸内海の風光明媚な島にある塩田跡地を使い、独特の生産方法で上質な牡蠣をつくり、国内外で高い評価を得ているファームスズキの鈴木隆代表にフォーカスさせていただきます。牡蠣業界で大変注目されている鈴木さんを牡蠣食う研にお誘いし、一緒に「広島の牡蠣シーン」を変えていきたいわけです。目指す頂は、数年後に牡蠣シーズンが到来した広島のいたるところで、広島産の“生牡蠣”が美味しく食べられるようになっていること。さぁ、プロジェクトの幕開けでございます。
(取材/牡蠣食う研 野間真吾、市川梅)広島に
こんな牡蠣があるなんて……

挟まれるボーダーTシャツ姿の鈴木さん
「こんにちは。本日は瀬戸内海に浮かぶ大崎上島の塩田跡地で、極上の牡蠣をおつくりになっているファームスズキさんにお邪魔したいと思います」
今回、取材を担当するのは広島のオーセンティックバー『TOP NOTE』のオーナーバーテンダーで牡蠣食う研メンバーの野間真吾研究員(ドリンク担当)と、広島のタウン情報ウェブマガジン『ペコマガ』編集長で牡蠣食う研メンバーの市川梅研究員(広報担当)のお二人。

牡蠣愛、広島愛ともに深い若手研究員です

「どうも、野間です。今日はファームスズキさんでいろいろ勉強させていただきたく、取材に臨みたいと思います」

「こんにちは、市川梅です。美味しい牡蠣を生で食べられると聞いて乗り込みました……が、日差しが鬼のように強くて、今日一日でUVクリームを使い切りそうで怖いです」
そんなこんなでファームスズキに到着。そこには、海外のシーフードレストランのような、ステキな外観の建物が。ステキです。

生産現場でもありつつ、採れたての牡蠣をいただける
レストラン「FARMER’S KITCHEN」も併設しております
そしてこちらがファームスズキ代表の鈴木隆さんであります。

笑顔がとってもチャーミング
鈴木さんは1976年、東京都生まれ埼玉育ちの43歳。少年時代から魚釣りが大好きで、海のない地域で育ちながら、コイ・フナ・ナマズを釣る毎日を過ごされました。青年となった鈴木さんは、魚好きが高じて山口・下関の水産大学校へと進学。2001年に同大卒業後、東京の中央魚類株式会社へ入社いたします。東南アジア等で水揚げされたエビを現地に買い付けに行き、日本向けに販売する業務を担当。そんな鈴木さんがなぜ広島で牡蠣養殖を生業とするようになったのでしょうか。しかも日本で一般的な筏養殖ではなく、欧米式のカゴ養殖をするに至ったのでしょうか……聞きたいことは山ほどございます。
「本日はよろしくお願いいたします。私たちの活動コンセプトは、広島を『世界一牡蠣がおいしく食べられる街』にしたいというものです。そこで鈴木さんには是非、私たちと一緒にそれを実現するため、牡蠣食う研に参加していただきたいんです」

「ええ、いいですよ。楽しそうなので入ります(超あっさり)」

できる男は決断が早うございますね
「ありがとうございます! では鈴木さんは私たちのお仲間ということで、ここから『鈴木研究員』と呼ばせてください(前のめり気味に)」

「あ、はい……。それよりみなさん、うちの牡蠣食べたことあります?」

「ないんですよ。前々から気になってはいたのですが」

「私もないですね。同じく、ずっと気になっていました」

「そうでしたか。でも、意外とそういう方は多いと思います。というのも、うちの牡蠣は、基本的に国内は全国に約3,000人の顧客、残りは海外の大口の取引先に買っていただいており、広島の店舗にはあんまり卸していないんですよ。まずはうちの塩田熟成牡蠣がどんなものか、確認してみてください!」
と言われて、お出しいただいたのがこちらのプレート。
牡蠣。そしてエビ&レモン。

この車エビもファームスズキの養殖池で採れたもの。
添えられたレモンは香り高き大崎上島産であります

「うわ〜、はじめてみるタイプの牡蠣です!見た目もきれいですけど、とっても小ぶりでかわいい。いつも食べている牡蠣に比べると半分どころか、3分の1くらいの大きさしかなさそうです」

「そうなんです。日本の牡蠣というと殻も大きく、身も分厚くてプリッとしたものが主流ですが、うちのは海外のオイスターバーなどで好まれる小さめサイズ。小さく育てるのって、実は難しいんですよ」

どこか「おしゃれ」な牡蠣なのであります

「たしかに海外ではこういうサイズの牡蠣を生で食べるという文化がありますよね。ウィスキーを垂らして食べたら美味しそうだ(遠い目で)」

「さすがバーテンダーさんですね、その食べ方も美味しいと思いますよ!でも、まずはなにもつけずに、そのままの食べてみてください!」
それでは遠慮なく……
いってきます!

!!!!!!!!

まさかの!

GO TO HEAVEN!

「二人ともすごいうれしそうですね(笑)」

「ぶち美味しいです!牡蠣独特の臭みがまったくないのに、しっかり濃厚な味わいがある。こんな牡蠣食べたの初めてかも!」

「香りもよく、塩味もしっかりきいていて、なにもつけずに食べてこんなに美味しいとは……驚きました。そして身もボテっとしておらず、薄いのでツルっと喉を通っていきます。これはお酒がほしくなりますね」
「さっきから酒のことばっかり仰ってませんか(笑)」

「ええ、こんな美味しい牡蠣をいただくと、やはりマリアージュしたくなるもので」
バーテンダーという職業柄、どうしても酒とマッチングしたい気持ちを抑えられない様子の野間研究員。ナイスな研究魂であります。ということで、インタビューそっちのけで、野間研究員がひそかに持参した数種類のお酒でマリアージュテストを実施してみることになりました。
即席!牡蠣と酒の「マリアージュ研究」をやってみた!

右隣に2本並ぶのが広島産クラフトジン「桜尾」、
(この日は「SAKURAO GIN ORIGINAL」と
「SAKURAO GIN LIMITED」の2種類を用意!)
そして一番右にあるのが
アイラウィスキー「キルホーマン」の
とても珍しいものであります
「また素晴らしくいいお酒ばかりですね(感嘆)」

「しっかりセレクトしてきました。まずは広島産のボタニカルがふんだんに使われている『桜尾』を垂らしてみましょう。このお酒は広島県産の原料のみで作られた、初の純国産のクラフトジンですから、ここ広島で育った牡蠣と相性が悪いわけはありません。ただ、お酒を入れてしまうと牡蠣が本来持っている塩味が薄れるので、塩(しかもファームスズキさんの塩田でつくられた塩)を少しだけ加えてみましょう」

同じ海水から作られた塩をふりかけ、
広島産のクラフトジンを垂らす……
こんな贅沢なことが許されてよいのでしょうか
クンクンクン

「チュル」

「はうぁ!」


「最高のマリアージュ、信じられないくらい美味しいですね。これ、うちの店でも出したいな……」
「出しちゃいましょう!」

「またまた野間さんも大げさですね〜。だって普通に食べた方が美味しいでしょう?だいたい、こんなに美味しい牡蠣に手を加えたら、もったいないですよ〜。じゃあ、私もいただいてみますね(と、超絶ベタなフリを入れつつ食べる市川研究員)」
「ほんまじゃ!!」

ナイスリアクション

「これ、すごい!お酒を入れることで、また別の楽しみができちゃう感じですね。広島のお店でこういう牡蠣が普通に食べられるようになったら、ちょっとヤバくないですか?(ワクワクしながら)」
「ええ、それを目指しましょうというプロジェクトですからね。いろいろ課題はあるのでしょうが、実現するためにみなさんの気持ち、そして力が必要なのでこれからも一緒に頑張りましょう!」

「ええ、もちろんです。それにしても、この牡蠣、どこまでも可能性を感じてしまいますね。次はこちらを試してみましょう」
『旨味』という名の
魔水を一滴。

まさに旨味が凝縮されているジャパニーズビターズ「旨味」。
この後に、醤油を一滴垂らすのが野間流。
すでに食べる前から、この場は「絶対にウマいに違いない」
という空気が支配しております

「これもまた違った角度で美味しい!!広島の牡蠣をずっと食べて育ってきたけど、こういう牡蠣体験はしたことなかったです。こんなに奥深くて、いろいろ楽しめるものだったなんて」

「生で食べるときも、いろいろアレンジをすれば新たな食体験となる。これは、もっともっといろいろなお酒で試したくなりましたね」
この後、アイラウィスキーとの極上のマリアージュを楽しみ、さらに車エビも堪能させていただきました(この車エビも絶品なのですよ……)。
さてさて、鈴木研究員の“生牡蠣”が激しく美味しいことを確認し、さらにそれを一流バーテンダー・野間研究員がちょっとした“アレンジ”を加えることで、新しい愉しみ&悦びが生まれることを知ってしまった牡蠣食う研。この食べ方は改めてどこかで本格的に研究いたします。そして、いずれ広島県内の飲食店に実装(メニュー化)することを目指します!

ということで今回はここまで。こんな上質な“生牡蠣”が、広島のいたるところで食べられる未来が少し見えてきましたでしょうか?さて続きは本テーマ第2章で。なぜ鈴木研究員は、広島にやってきて牡蠣養殖をするようになったのか。そして、“生牡蠣”にこだわるのか。鈴木研究員が静かに熱く本音を語り尽くします――(つづく)
※取材は夏季に行われたものですが、提供されている牡蠣は冬場にとれた生食用のものを瞬間冷凍して、解凍したものを使用しています。
撮影:藤川隆久
- 今回の牡蠣食う研究
広島の“生食カルチャー”を進化させて、みんなに広島の牡蠣は生で食べても最高!って言わせたい!