REPORTvol.3

大崎上島産牡蠣を缶詰に…!?その開発現場に倉橋島のレジェンド生産者&一流バーテンダーが潜入、の巻

手前の濃い色のものが牡蠣の燻製オイル付け、奥は牡蠣の水煮の缶

ここ数年、広島でも多い自然災害。そういうとき、冷凍でも冷蔵でもなく、常温で長期間保存できる水産物があればいいなと思ったんです。持ち運びも簡単にできますし…(牡蠣生産者・鈴木隆)

災害時にも役立つ常温保存食として、さらに巣ごもり需要を支える食事バリエーションのひとつとして、ここ数年ブームが続く「缶詰」。鯖缶、カニ缶、ツナ缶、桃缶…群雄割拠の缶詰業界に、広島の牡蠣生産者が打って出る…との噂をキャッチした牡蠣食う研。絶賛開発中だというその様子をレポートするべく、一路、大崎上島へと渡りました。

(取材・文/牡蠣食う研 鈴木隆、斎藤紲男、野間真吾)

竹原港に続々と集う
牡蠣×レモンシャツの男たち

時は9月。夏から秋へ、季節が駆け足で変わろうとするその一瞬。我々牡蠣食う研は広島県竹原市「海の駅たけはら」前のボート乗り場に佇んでおりました。通称・安芸の小京都とも言われる竹原市は、古き良き雰囲気を残す町並みで知られております。一方、大崎上島や大久野島など、瀬戸内の島々へ出かけるための港町という一面も。実は今回、牡蠣食う研の目的地は大崎上島。ある殿方から呼び出しを受けておりまして…。

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「瀬戸は~、ホニャララ~、ホニャラ~ララ~ラ~ラ~♪広島市内から車で約1時間。竹原ってマイクロツーリズムにもドンズバなエリアでございますねえ。海の駅の3階レストランでお腹いっぱい食べて大満足でございます。さて、本日我々を呼び出したご本人は、と…(キョロキョロ)」

「牡蠣食う研さん、遅い!みんな揃ってますよ~」

船の上で牡蠣シャツとボーダーを着た研究員3名
牡蠣シャツ、ボーダー、牡蠣シャツ

本日集合した牡蠣食う研メンバーは、こちらのお三方。左から牡蠣食う研のスペシャルシニアアドバイザーで呉市の倉橋島にて「倉橋島海産」を営む斉藤紲男研究員、本日我々をこちらに呼び出した牡蠣生産者・大崎上島「ファームスズキ」の鈴木隆研究員、そして広島市でバーや紅茶専門店を複数経営するバーテンダー野間真吾研究員でございます。

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「わおー、もしかしてそのボート、鈴木研究員の!?これで大崎上島までお連れ頂けるのでしょうか。なんとも素敵な…!」

鈴木研究員
鈴木研究員

「そうです!竹原港から、ファームスズキ最寄りの鮴崎港まで10分ぐらいで行けます。救命胴衣を忘れずに着用してくださいね」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「よろしくお願いします!(深々と一礼)」

そんなわけで、ボートで移動すること約10分…。

海の青と牡蠣×レモン柄のシャツが抜群に映えている
海の青と牡蠣×レモン柄のシャツが抜群に映えております

到着しました!「ファームスズキ」

マリンカラーがなんとも爽やかな建物「ファームスズキ」
マリンカラーがなんとも爽やかな建物

2011年よりこの地での牡蠣養殖をスタートした鈴木研究員。こちらでは、従来の海を使った牡蠣養殖とは異なり、かつて塩田として使われていた池を活用して牡蠣やクルマエビを育てています。井戸を掘り地下海水をくみ上げて使うこと、一年のうち数カ月は池の水を抜いて池を休ませること…日本では唯一とされるスタイルで薬品などを使用せず育てる牡蠣は生食に適し、ここ大崎上島から世界のオイスターラバーたちに届けられております。

(昨年の牡蠣食う研記事でもご紹介しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください…!)

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「鈴木研究員、思えば5月ごろに池の水を抜く作業をしておられましたが、今(2020年9月中旬)は、養殖池はどういった状況なのでしょうか」

鈴木研究員
鈴木研究員

「だいぶ育ってきていまして、あと1~2週間で今年の牡蠣が売りに出せるという感じです。よかったら池も見てみてください!」

かつて製塩業に使われていた池。全部で4つの池を管理している
かつて製塩業に使われていた池。全部で4つの池を管理しておられます
鈴木研究員
鈴木研究員

「うちでは毎日水質検査をしてPHなどを確認しています。塩分濃度が3%に保たれるように、適度に海水を入れて整えるんですね。ここは海面よりも低い位置にあるので、水が入りやすいんです。池の色が変わるので、僕は塩分濃度が1%変わっても見て分かります。塩分が薄くなると、プランクトンが増えて池の色が濃くなるんですよ」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「へえー。なんとなくプランクトンが増えたほうが、食べ物がたくさんあっていい気がしますが、そういうものでもないのでしょうか」

鈴木研究員
鈴木研究員

「いや、ほかの生き物が繁殖しすぎるとエビが酸欠になっちゃうんです」

斎藤研究員
斎藤研究員

「初めて見たわ~。写真でイメージしとったけど、なんか思うとったより広いねえ!ワシもここで牡蠣育ててみたいわ。あんた、うちの養子にならんね!?」

鈴木研究員
鈴木研究員

「えっ…いいんですかね!?(笑)」

スモークした牡蠣の
ペアリングを考える

池の見学の後は早速本題です。実は今回我々牡蠣食う研がここ「ファームスズキ」を訪れたのは、鈴木研究員がこの度開発に着手した、新しい商品を見せていただくためでした。池に隣接する加工場にご案内いただくと、そこに待っていたのは…

こちらが今回のテーマ!ジャジャン♪

手前の濃い色のものが牡蠣の燻製オイル付け、奥は牡蠣の水煮の缶
手前の濃い色のものが燻製オイル付け、奥は水煮の缶
鈴木研究員
鈴木研究員

「実は今日皆さんに来ていただいたのは、この缶詰の試食をお願いするためなんです!」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「試食でしたらぜひ、このわたくしめも!!!!そして今回はこちら、味覚のプロフェッショナル、バーテンダーの野間真吾研究員にもお越しいただきました。燻製とドリンクのマリアージュについてアイデアがいただけるのではないかと期待…!」

「お任せください…(いい声で)」

牡蠣の燻製オイル付けをフォークでとる野間研究員
「ヘネシー カクテルコンペティション 2019」でグランドチャンピオンに選ばれるなど、バーテンダーとしての才能は折り紙付きの野間研究員

では、さっそく試食してみましょう!

牡蠣の燻製オイル付けを試食する3人の研究員
缶詰は水煮と燻製がありますが、今回は燻製を試食
野間研究員
野間研究員

「…なるほど…。うん、美味しいですね。食べ応えがあります。これは比較的あっさりとしたタイプの燻製ですね…。これは、燻製させている木は何ですか?優しい香りですね」

鈴木研究員
鈴木研究員

「桜のチップです。今日試食していただいたものは缶詰に入れる前の燻製の状態です。この後オイルにつけて缶に詰めると、この状態よりも柔らかくなると思います」

斎藤研究員
斎藤研究員

「僕スモーク大好き~。(パクパク)…うん、こりゃうまい。いや、うちのが旨いかな!(笑)うちで出しとる缶詰も、もっとフォアグラみたいに柔らかくなるよ。まあ、好き好きじゃろうね」

加工場で見学した、燻製を缶に入れる様子
加工場で見学した、燻製を缶に入れる様子。オイルに漬けることで食感が変わる
牡蠣食う研
牡蠣食う研

「野間研究員、こちらの燻製を缶詰にしたもの、ドリンクとの相性はいかがでしょう!?」

野間研究員
野間研究員

「そうですね…。醸造酒なら日本酒やワイン。少し酸味のある銘柄がいいと思います。広島の日本酒でいえば、『富久長』はいかがでしょうか。東広島市安芸津にある今田酒造本店さんのお酒です。こちらの白麹純米酒『海風土(シーフード)』は、蔵元が魚介類と合うようにと、白麹を使用して造ったクエン酸が高いお酒です」

鈴木研究員
鈴木研究員

「さすがですね野間研究員!実は『富久長』さんとは、うちの活牡蠣とセットで良くコラボしているんですよ。『海風土』は良く合いますよね!」

野間研究員
野間研究員

「それと、呉市音戸の榎酒造さんが造る『華鳩』の貴醸酒もいいですね。仕込み水の代わりに純米酒を使うなど個性的な製法で、酵母のアルコール発酵がゆっくり進むため濃密で風味豊かな酒に仕上がります。シェリー酒のようなトロリとした甘みがあり味の層が深いんですよ。チーズやフォアグラ、豚の角煮などこってりした料理によく合います」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「『華鳩』の貴醸酒は、濃密な味わいでトロリとしたお酒ですよね。私も好きで、夏はアイスに掛けたりもいたします。こっくりとした燻製牡蠣に合わせるのは面白そうです! それでいうと野間研究員、こちらの燻製を蒸留酒と楽しむなら、やはりウイスキーがよいですかね…?」

斎藤研究員
斎藤研究員

「牡蠣の燻製にはバーボンが一番ええって聞いたことあるわ~」

野間研究員
野間研究員

「その通り!バーボンは樽の内側を焦がして熟成させるので、香ばしい香りが付きます。燻製とはとても相性がいいですね。スコッチならアイラウイスキーが特にいいと思います」

ちなみにアイラウイスキーはスコッチの一種で、スコットランド西側に位置するアイラ島で作られたモルトウイスキーのことを指します。「ラフロイグ」「ボウモア」などが有名でしょうか。製造過程で用いるピート(泥炭)由来のスモーキーな香りと、島独特の磯の香りが感じられる1杯です。確かに、海のものと相性が良さそうでございます…!

野間研究員
野間研究員

「ところで鈴木研究員、私ちょっと思いついたんですが…。この缶詰の中に、紅茶の茶葉を入れたらだめですか…?」

か…牡蠣の燻製に…紅茶葉…だと!?

驚きで目が点になる鈴木研究員
驚きで目が点になる鈴木研究員
鈴木研究員
鈴木研究員

「え!どうだろう…!?意外と旨いもんですか??(戸惑い)例えば、どんな茶葉でしょうか」

野間研究員
野間研究員

「中国茶の一種で、薫茶と言われるラプサンスーチョンという茶葉がありまして。燻製茶なんですけど、これはもう間違いなく合うと思います。もともと茶葉が、松の葉でいぶされているので…。実際合わせたこともあります。家庭で手に入れやすいものだとアッサムとか、ちょっと力強い茶葉のほうが、負けないと思います。お茶のエキスはアミノ酸とも相性いいですから」

鈴木研究員
鈴木研究員

「なるほど!なんだか楽しくなってきましたね!入れる茶葉はたくさんですか?ちょこっとでもいいんですかね?けっこうドバっと入れたほうがいい?」

野間研究員
野間研究員

「やってみないと分かりませんが、ラプサンスーチョンであれば、一気に香りが広がるのでちょっとでいいと思います」

斎藤研究員
斎藤研究員

「ええじゃない、やってみたらマッチするかも分らんね。旨いこといったらうちでもやろうかの~(笑)」

コロナ禍で生まれた
「常温保存できる」牡蠣

新製品を作ることになったいきさつなどについて、鈴木研究員にインタビュー

牡蠣燻製の試食が一通り終わったところで、今回こうした新製品を作ることになったいきさつなどについて、鈴木研究員に伺ってみました。やはり、今年春からの新型コロナウイルス感染拡大の影響なども大きいのでしょうか。

鈴木研究員
鈴木研究員

「そうですね。新型コロナウイルスの影響はやはりあります。ここは島なので、作った牡蠣を保管する場所が限られているんですよね。全部の商品を冷凍にして売れたらいいのですが、味は良いけど冷凍品としては売りにくい派生品を同じようにコストをかけて冷凍してもあまり意味がなくて…。でも、味的には変わらないんですよね。缶詰なら島にも常温で長期間置いておけますし、持ち運びもできます。広島はここ数年災害も多いですが、そういう時も、冷凍や冷蔵で長期間置いておくことは難しい。災害や、今回みたいにコロナでステイホームが求められる時、持ち運び出来て家庭で常温保存できる水産物があったほうがいいんじゃないかと思ったのがきっかけです」

斎藤研究員
斎藤研究員

「新型コロナの影響は計り知れんよね。見通しが立たん。うちはロットが大きいじゃろ。300tとか500tとかを全国のチェーン店やレストランなんかに卸し売りするという話ですから…」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「斎藤研究員が営む倉橋島海産さんはかなり規模が大きいですもんね。牡蠣打ちも、打ち子さんに加えて圧力を使って自動で牡蠣剥きするシステムを導入されていますし、カキフライなどへの加工も自社で一貫生産しておられる。やはり、外食企業向けの卸の影響は出ておられますよね。コロナ禍で家庭での需要が増えて、生産者さんによってはオンラインショッピングが好調という話も聞きましたが…」

斎藤研究員
斎藤研究員

「好調というても、卸とは規模が違うよ。うちも、これまではあんまり家庭向けの販売は力入れとらんかったけど、今年はそうもいかんで。TVショッピングやったり、新商品で牡蠣味噌考えたり、細かくしよります。うちはトン単位でしか売らん、思うとったけど、今はグラムで売りよるよね。ただやっぱり、広島の牡蠣は安うに大量に作れんと合わんからねえ…。これからは高価格帯で少量生産と低価格帯で大量生産、広島牡蠣も二局化が進んでいくんじゃろうね」

鈴木研究員
鈴木研究員

「そうですよね、業務用の牡蠣を家庭用に…といっても、なかなか業務用をカバーできるほどの家庭用の利用はないですよね。オンラインストアやBtoCは、伸びてはいますけど…。おっしゃるように今後は牡蠣の売り方や買われ方もだんだん変わっていくんだと思います」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

鈴木研究員の牡蠣の缶詰は、そうした模索の中で生まれた試験的な商品ということですね…!確かに牡蠣の缶詰は、保存場所など生産者側の面からも、またおうち需要や災害備蓄品のバリエーションを増やすという意味からも、これからの時代にマッチしたアイデアかと思います!」

牡蠣生産のこれからについて語り合った3人の研究員
牡蠣生産のこれからについて語り合いました

そうこうするうちに、帰りの時間が近づいてまいりました。最後に、この缶詰がいつ頃から我々の家庭で食べられるようになるのか、鈴木研究員にお聞きしたところ…。

鈴木研究員
鈴木研究員

「あっ、すみません!実はまだ値段も決まっていません(2020年9月現在)。10月末に、広島駅前の『蔦屋家電』で缶詰を使った料理を披露することになっていまして…。これに間に合うように鋭意研究中です!」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「10月末お披露目、カミングスーンということですね。あ!それでは、そのお披露目時期と合わせて、野間研究員のお店『Bar TOP NOTE』で、この燻製缶詰に合うお酒や、先ほどお話に出た紅茶葉入りの牡蠣を提供していただくというのはいかがでしょう?」

野間研究員
野間研究員

「もちろんです…(いい声で)!」

鈴木研究員
鈴木研究員

「やりましょう、ぜひ!」


そんなわけで、大崎上島まで牡蠣の缶詰を食べに行くというマイクロツーリズム的取材が終了いたしました。今回の記事に出てきた「ファームスズキ」さんの牡蠣缶詰は、10月31日(土)、以下で紹介する催しで御試食いただけます。また広島市中区「Bar TOP NOTE Ⅲ」でも、同日より提供いたしますので、ご興味をお持ちいただけた方はぜひ、足をお運びください。今回の牡蠣食う研では、例年とは違うオフシーズンとなった2020年春夏、牡蠣生産者の皆さまがチャレンジした新たな取り組みをご紹介してまいりました。そしていよいよ季節は秋、本格的な「Rのつく月」の始まりでございます…!牡蠣ングスーン!

撮影:中野一行


今回の記事でご紹介した「ファームスズキ」の牡蠣缶詰を試食できるイベントが開催されます。

「ファームスズキ」の牡蠣缶詰
日時
2020年10月31日(土)
11:00~17:00
会場
エディオン蔦屋家電 3階イベントスペース
Google MAP

「ファームスズキ」の牡蠣缶詰と、ウイスキーや紅茶の組み合わせが楽しめるのはこちら。
10月31日(土)~提供開始

The Bar TOP NOTE Ⅲ

店名The Bar TOP NOTE Ⅲ

場所
広島市中区紙屋町1-4-3 2F Google MAP
電話
082-258-1277
営業
18:00-2:00
定休
日曜(月曜が祝前日の場合は営業)
WEB
http://top-note.net/
今回の牡蠣食う研究

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担当研究メンバー