REPORTvol.1

かき船発祥の生産者・大野瀬戸の牡蠣オヤジが本気でラーメンを作ったら…、の巻

生産者・大野瀬戸の牡蠣オヤジが本気で作ったラーメン

牡蠣小屋のオヤジと思われとるかもしれんけど…わし、生産者じゃけえね!(牡蠣生産者・島田俊介)

牡蠣シーズンが終わるとともに世界を包んだ新型コロナウイルス。観光での来客が多い県内の牡蠣小屋や牡蠣生産者の皆様も、大きな影響を受けているのではないかと、我々牡蠣食う研も懸念しておりました。6月、新しい生活様式の始まりのもと、県内各地で人の行き来がスタート。まずは牡蠣食う研立ち上げメンバーである、大野瀬戸かき海道の「島田水産」さんを訪れてみました。実はこちら、広島ではおなじみ「かき船」発祥の生産者でもあるのです。作った牡蠣を消費者に直接食べていただくことにDNAを持つともいえる島田水産さん。オフシーズンにも牡蠣小屋を訪れたくなる、とっておきの牡蠣ラーメンが誕生したというのですが…。

(取材・文/牡蠣食う研 山根尚子)

初夏の牡蠣小屋を包む
牡蠣オヤジの豪快な笑い声

6月某日。暑い。暑い。むちゃくちゃ暑い。いやしかし晴天に恵まれました。梅雨の始まりを感じさせない暑さのなか、我々牡蠣食う研が訪れたのはこちら。広島県は廿日市市の海岸沿いに伸びる「大野瀬戸かき海道」の一角に位置する、「島田水産」さんの牡蠣小屋でございます。

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「あー、暑さを一瞬忘れる涼風が吹く。海岸沿いは過ごしやすうございます~。我々牡蠣食う研、今年度初の取材となりますが、やはり瀬戸内海の空気は素晴らしいですね~。スー、ハー、ススー、ハー」

「着きましたよ~、目印はこの看板!」

島田水産の看板を指さす山根研究員
国道2号、JR宮島口駅を過ぎて少し行った位置にございます

今回の取材担当は山根尚子研究員。牡蠣食う研メンバーでありつつ、タウン情報誌TJ Hiroshima&広島県営SNS「日刊わしら」の編集も担当するという文系レディでございます。これまでにも牡蠣小屋や大野瀬戸かき海道の取材は経験ありとのことですが、実は…。

山根研究員
山根研究員

「よく考えると、初夏の牡蠣小屋訪問は初めてかも!牡蠣のシーズンに取材することはあっても、オフシーズンに生産者さんが何をしておられるかって知る機会があまりないので…。島田水産さんではどんなことをしているのか、気になりますね」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「実はですね山根研究員。今回の島田水産さん訪問に関しては、熱心なファンの方からタレコミをいただいたのですよ…!」

山根研究員
山根研究員

「た、タレコミ!?」

「お~、牡蠣食う研さん、よう来たね。暑いじゃろ!」

島田水産の島田俊介社長
豪快に現れた大男。牡蠣食う研メンバー、島田水産の島田俊介社長でございます
牡蠣食う研
牡蠣食う研

「島田研究員!牡蠣シャツでのお出迎えありがとうございます!」

島田研究員
島田研究員

「前回、牡蠣食う研の撮影で着て以来初めて着たわ!!!」

今回訪れた島田水産さんは、1688年(元禄元年)に草津で牡蠣養殖を始めた、県内でも最古参のひとつとされる牡蠣生産者でございます。面白いのが、この時、牡蠣を生産するだけでなく「かき船」という売り方も同時に開発されていること。川辺に船をつけて牡蠣を販売、さらには調理してもてなすという「かき船」の文化は、島田研究員の先祖にあたる木屋周蔵さまが、地域の生産者たちと共に「草津かき仲間」を作り、1688年に大阪でかき船の営業を始めたことが端緒とされているのでございます。

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「大阪で始めたかき船は、明治時代に京都にも展開。こちらは『かき春』の名でなんと平成13年まで続いたそうで、広島最後の藩主浅野長勲候も訪れたとか。300年以上の歴史があるんですな~。その最後のかき船の店主が、何を隠そう、こちらの島田俊介研究員の伯父様ということになるわけでございます」

島田水産さんの牡蠣小屋にかかる看板
現在も島田水産さんの牡蠣小屋にかかる看板は、江戸後期のかき船のもの
山根研究員
山根研究員

「へー、そうなんですね!今でいうB to Cの先駆け!生産者の顔が見えるかき料理店ってことですね…」

「暇すぎて」生まれた!?
地産地消の牡蠣ラーメンとは…

島田研究員
島田研究員

「それで、今日は何を取材しに来ちゃったんね?牡蠣食う研さんは」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「あっ、そうなんです、実はですね。我々牡蠣食う研のFacebookに、何度もメッセージを下さる熱心な島田水産ファンの方がいらっしゃって…。なんでも、牡蠣のラーメンを新発売するから、ぜひ食べてみてほしい、と。本当ですか?」

島田研究員
島田研究員

「そうなんよ!わしが開発した牡蠣ラーメンを6月20日から牡蠣小屋で発売しとる。よう知っとるね~。せっかくじゃけ、まずは食べてみんさい」

…ということでドーーーーーーーーーーーーン

生産者・大野瀬戸の牡蠣オヤジが本気で作ったラーメン
乳白色のスープの上にたっぷりと盛られた牡蠣、牡蠣、牡蠣…
山根研究員
山根研究員

「うわー、すごい牡蠣の量!これでおいくらですか?」

島田研究員
島田研究員

いま900円で出しとる。カキフライは別料金。トッピングで1個100円じゃね。1杯1500円くらいにして、麺が見えんくらい牡蠣乗せた豪華版とかもやろうかの~と思っとる」

山根研究員
山根研究員

「えっ!きゅーひゃくえん???それって…牡蠣一個が普通あのくらいの価格だから、えーと原価が…」

島田研究員
島田研究員

「…………………」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「…………………」

山根研究員
山根研究員

「…………………」

「…ま、ええじゃろ!牡蠣じゃけしょうがない(笑)」

白い歯が光る海の男、島田研究員
白い歯が光る海の男、島田研究員。あまりのコスパぶりにテヘペロなご様子

島田研究員の豪快っぷりに圧倒されながら、まずは試食。ベースのスープは白味噌で少し甘めの味付け、後から味変に使う添え物の赤味噌はピリ辛風味でございます。

大野瀬戸の心地よい風のなか牡蠣ラーメンを食べる島田研究員と山根研究員
密を感じない大野瀬戸の心地よい風のなか、仲良く牡蠣ラーメンをつつきました
牡蠣食う研
牡蠣食う研

「丼の端っこにぺったりと塗られた味噌が、あれを想像させますね、あの~、あれ~、なんでしたっけ…?」

島田研究員
島田研究員

牡蠣の土手鍋じゃろ。それをイメージしたんよ。牡蠣と味噌、合うに決まっとるのおと思って。じゃけえ最初がちょっと甘いんよね。赤味噌は混ぜるほどピリっとするけえ、最初に食べて味を見ながら足していったらええよ。味噌もいろいろ探したんじゃけど、これは府中味噌で塩分少なめのやつ。スープは、うちがかき船やっとる頃から使っとる伝統の出汁が入っとる。鰹節と昆布で取るんじゃけど。それだと魚介ばっかりになるけえ肉系も入ったほうがええのうと思って、作るときに豚挽き肉も加えとる」

山根研究員
山根研究員

「カツオ、昆布、味噌…ですか。確かに肉を入れたくなりますね。…というか、このスープそれだけじゃないですよね!?ちょっと飲んでもむちゃくちゃ牡蠣の味がするんですけど…」

島田研究員
島田研究員

「それはね、牡蠣のペースト。東京の有名な牡蠣ラーメンの店では牡蠣ペースト入れとるいうんを聞いてから、試しにやってみたんよ。これはタレにもスープにも入っとる。酒と生姜入れて火を通した牡蠣をペースト状にしたやつ。これの量が難しくてから。一定までで止めとかんと入れすぎになるし、うま味を感じさせんといけんし」

山根研究員
山根研究員

「いや、今くらいで程よいと思います。味噌の香りもしっかり感じられますし、スープを全部飲みたいくらいの濃さですし。縮れの中細麺もよく絡んで、食べやすい!ちょっと担担麺っぽい雰囲気なのも広島県民にウケそう。あと生産者さんだけに、乗ってる牡蠣がしっかりしていますね。焼いて乗せてあるほうも美味しいし、トッピングのフライも身がギュッとしてて食べ応えあります。置いておくうちに下側の衣がスープにしみしみになってるところもいい!しかし、これだけ身が乗って、さらに牡蠣ペーストまで入って900円とは、生産者さんじゃないと絶対に提供できないですね…!このラーメン、島田さんが考えたんですか?」

牡蠣ラーメンを食べ笑顔になる山根研究員
山根研究員もこの笑顔。牡蠣の香りが、海辺で食べるのにぴったりの1杯でございます
島田研究員
島田研究員

「そうよ。わしが考えたにしちゃあ、イケとるじゃろ!?今暇すぎて、作ってみたら結構旨いのう!思うて。実は前から思いよったんよ、ここもぼちぼち息子に任さんといけんけえ、わしゃいずれラーメン屋でもやろうかの~と。なんかラーメン面白そうじゃし。あんまりないじゃない、牡蠣のラーメンて」

ちなみにこのラーメン、麺は広島市で大正時代から続く老舗「三田製麺所」、味噌は広島県府中市の名物である府中味噌2種類、取材日は使用されておりませんでしたが世羅町産の松なめこを具材に盛り込むなど、ALL HIROSHIMA的地産地消ラーメンであることもポイントでございます。いずれはお土産物として販売したり、サービスエリアで提供したり、といったことも視野に入れておられるとのこと。実現したらヒットしそうでございます…!

生産者だから提案できる
牡蠣の食べ方、知らせ方

今年の牡蠣漁が終わった5月末。ふだんなら1年中営業している「島田水産」さんの牡蠣小屋も、やはり大幅な集客減に見舞われていたそうでございます。

島田研究員
島田研究員

「春夏も牡蠣小屋で働いてくれとる人の仕事をなくすわけにいかんから、毎年休みなく営業しとるんよ。いつもじゃったら、外国人観光客は夏でも牡蠣食べてくれるけえ、良かったんじゃけど…不思議とボウズはなかったが、今年は新型コロナウイルスの影響で本当にお客さんが来んね。うちも1カ月くらい休むことになって。それで時間ができたけえ、ラーメン作りをすることにしたんよ」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「そこなんですよ島田研究員。島田水産さんって、生産者の枠を超えたというか、実にいろいろなことに取り組んでおられますよね。以前山陽女子短期大学の皆さんと共同開発されたという『かきグラまん』とか…。それに、牡蠣の水揚げ見学もしておられると聞きました」

牡蠣の水揚げ風景
牡蠣筏見学、嚴島神社への海上参拝、牡蠣打ち場の見学と漁師飯の試食がセット
島田研究員
島田研究員

「そうそう、朝早いけそんなに人来んけどね!こんなアホなことするやつ他におらんじゃろ~、と思ってやってみた。最初に、牡蠣小屋の常連さんが水揚げを見たいって言ってくれたけえ、それがきっかけで4~5年やっとる」

山根研究員
山根研究員

「水揚げ体験興味あります!確かに、どうやってこの牡蠣ができたかが分かれば、食べるのがもっと楽しくなりそう。お客さんの声を実現してくれたら、常連さんも嬉しいですよね」

島田研究員
島田研究員

「牡蠣小屋ができて15年くらい経つんじゃけど、そのおかげでお客さんがどんなこと考えとるんかわかるようになったんよね。わし、とりあえず面白そう!と思ったらやるほうなんよ。牡蠣小屋も、九州の同業者が、あっちじゃこんなん流行っとるよ、って教えてくれたんがきっかけ」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「九州の生産者さんともお付き合いがあるのですね…!」

島田研究員
島田研究員

「昔は交流なかったんじゃけど、バブルが終わって広島の牡蠣も低迷期に入ったとき、このままじゃメシも食うていけんみたいなことがあって。それで、今力を入れとるプレミアム牡蠣の『安芸の一粒』とか、値段は高いけどええ牡蠣を作ろうと挑戦を始めたんよ」

籠に並べられた牡蠣
牡蠣を籠に入れ、一粒ずつ育てるシングルシード法での養殖に、牡蠣生産者としては全国で初めて成功
島田研究員
島田研究員

「そんな中で、他の県の生産者さんと交流が生まれだしてね。他の県からしたら広島って目標にされとるじゃろ、くらいに思っとって、驕りがあったよね…。それで九州を真似て広島で初めて牡蠣小屋をやってみたら、口コミでどんどん広がって、今度はお客さんとの接点が生まれて。水揚げが見たいならやってみよう、牡蠣使った料理の提案するんも、生産者にしかできんことがあるんじゃけえやってみよう、と」

広島の牡蠣は生産量の多さばかりがクローズアップされ、その質に光が当たって来なかったと感じておられる島田研究員。15年間続けてきた牡蠣小屋で、消費者の声を直接受け取るようになり、考え方が大きく変わったのだそうです。

島田研究員
島田研究員

広島の牡蠣をみんなに知ってもらわんと、将来続けられんですから!結局生産者は、牡蠣を知ってもらいたいんよね。こんだけたっぷりと牡蠣を使ったこのラーメンもそうじゃけど、生産者にしかできんいろんな提案があると思うんよ。牡蠣小屋し出して、みんなから牡蠣小屋のオヤジと思われとるかもしれんけど…」

「わし、生産者じゃけえね!」

海に生きがいを捧げて来た島田研究員
焼けた肌からも、海に生きがいを捧げて来たお方であることは伝わってきます
山根研究員
山根研究員

「島田水産さんのDNAは、そもそも広島の生産者が関西のお客さんに直接牡蠣を売った江戸時代の『かき船』ですもんね。そう思うと、島田さんの中にある挑戦する心とか、消費者とのBtoCな関わり方っていうのは、300年以上受け継がれている広島牡蠣生産者の魂そのものなのかもしれませんね…!」

そう話し終えてふと海に目をやると…。なんだか見覚えのある形の船が停めてあるではありませんか。この屋根の形、船内の雰囲気、これってまさか…。かき船…?

「そう!この秋から『かき船』復活したいと思っとるんよ」

かき船として使われるみごとな屋形船
みごとな屋形船。窓を開ければ三密も避けられそうです
島田研究員
島田研究員

「江戸から代々、300年以上続けてきたかき船。最後の経営者であるうちの伯父さんから『俊介、なんとか復活せよ』いうて看板を託されとるけえね。船の胴体に『木屋』って書いてあるじゃろ?あれが江戸から続くうちの屋号。広島牡蠣の原点じゃと思っとる。牡蠣小屋でメシ食って、船で宮島まで行けて、船の中でも料理出して…ってできたらええじゃろ」

山根研究員
山根研究員

「船ですから換気もばっちりですね…!そして本当に、生産者さんしかできない提案…!始まるのを楽しみにしています!」

牡蠣食う研
牡蠣食う研

「本日は本当にありがとうございました。思えば、今回島田水産さんにお伺いすることになったのも常連客の方からのメッセージがきっかけです。島田さんの牡蠣愛が伝わるから、常連さんがわざわざ牡蠣食う研までご連絡をくださったんですね。島田水産さんは生産者であると同時に、広島牡蠣の美味しさを消費者の皆さんに届ける伝道師でもあるのだなということがよく分かりました…!」


1杯のラーメンを取材するつもりが、作った牡蠣をいかに食べてもらうか、知ってもらうかという話、そして歴史ある「かき船」復活のニュースにまで触れることになった今回の取材。牡蠣を愛する牡蠣オヤジの、深い懐と愛を感じる一日となりました。島田水産さんの牡蠣小屋は、夏季も絶賛営業中でございます。この記事を読んで興味が湧いた方は、ぜひ大野瀬戸かき海道「島田水産」さんへ足をお運びください。

撮影:中野一行、山田圭


このラーメンは、下記店舗でお買い求めいただけます!

島田水産外観
駐車場は国道2号の反対側にあり
島カキ内装
夏場は単品の牡蠣料理各種を提供

島田水産 牡蠣小屋

電話
0829-30-6356
場所
広島県廿日市市宮島口西1丁目2-6 Google MAP
営業
10:00~17:00(水曜~16:00、土曜~20:00)
定休
不定休
WEB
http://shimadasuisan.com/
今回の牡蠣食う研究

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担当研究メンバー